Module 1: 基礎 — AIエージェントを理解し、使い始める

対象読者: ITツールに慣れている非エンジニアの方(SaaS利用経験あり、CLI/Git未経験) 所要時間: 約3〜4時間(通読+ハンズオン) 前提知識: PCの基本操作、Webブラウザの利用、テキスト入力ができること


目次


第1章: AIエージェントとは何か

1.1 チャットボットとエージェントの違い

みなさんの多くは、ChatGPTやClaude.aiなどのAIチャットボットを使ったことがあるでしょう。チャットボットは非常に便利ですが、AIエージェントはそれとは根本的に異なる存在です。

この違いを、オフィスでの仕事に例えて説明します。

┌─────────────────────────────────────────────────────────────┐
│                    AIチャットボット                           │
│                                                             │
│  あなた: 「売上レポートの書き方を教えて」                       │
│    AI  : 「売上レポートはこう書きます。まず...」               │
│  あなた: 「グラフも入れたい」                                  │
│    AI  : 「グラフを入れるにはこうします...」                   │
│                                                             │
│  → 質問に答えてくれる「相談窓口」のようなもの                   │
│  → 実際に手を動かすのは自分                                   │
└─────────────────────────────────────────────────────────────┘

┌─────────────────────────────────────────────────────────────┐
│                    AIエージェント                             │
│                                                             │
│  あなた: 「先月の売上データからレポートを作って」                │
│    AI  :  1. データファイルを読み込みます                      │
│           2. 集計を行います                                   │
│           3. グラフを作成します                                │
│           4. レポートファイルを生成しました                     │
│    AI  : 「完成しました。確認してください」                     │
│                                                             │
│  → タスクを丸ごと任せられる「チームメンバー」のようなもの       │
│  → 計画を立て、実行し、成果物を提出する                        │
└─────────────────────────────────────────────────────────────┘
比較項目AIチャットボットAIエージェント
やりとり一問一答タスクを委任
動き方聞かれたことに答える自分で計画を立てて実行する
ファイル操作できない(または限定的)自由に作成・編集できる
複数ステップ1回の返答で完結何段階もの作業を連続実行
例え「受付の案内係」「仕事を任せられるアシスタント」

1.2 AIエージェントの3つの特徴

AIエージェントには、チャットボットと区別される3つの重要な特徴があります。

特徴1: 自律性(じりつせい)— 自分で考えて動く

チャットボットは「聞かれたことに答える」だけですが、エージェントは与えられたタスクに対して自分で計画を立て、途中で判断しながら作業を進めます。

例えば「このフォルダの中のCSVファイルを整理して」と頼むと、エージェントはまずフォルダの中身を確認し、どんなCSVがあるか把握し、整理方針を考え、実行します。途中で想定外のファイルがあれば、自分で対処方法を考えます。

特徴2: ツール使用 — 道具を使いこなす

エージェントは、テキストを生成するだけでなく、さまざまな「ツール」(道具)を使えます。

エージェントが使えるツールの例:
  - ファイルを読む・書く
  - Web検索で情報を調べる
  - コマンド(命令文)を実行する
  - 外部サービスと連携する

これは、人間が仕事でExcel、メール、ブラウザなどの道具を使い分けるのと同じ感覚です。

特徴3: マルチステップ実行 — 複数の工程を自動でこなす

1つの依頼に対して、複数の工程を自動で連続実行できます。

依頼: 「競合分析レポートを作って」

  ステップ1: Web検索で競合情報を収集

  ステップ2: 情報を整理・分類

  ステップ3: 比較表を作成

  ステップ4: 分析コメントを追記

  ステップ5: レポートファイルとして保存

1.3 ビジネスにおけるAIエージェントの位置づけ

AIエージェントを活用する際に最も大切な考え方は、AIエージェントを 「新しいタイプのチームメンバー」 として捉えることです。

ただし、人間のチームメンバーとは役割分担が異なります。

┌──────────────────────────────────────────────────┐
│           人間とAIエージェントの役割分担            │
├──────────────────────────────────────────────────┤
│                                                  │
│  【人間が担うこと】          【AIに任せること】     │
│  ・最終的な判断              ・情報収集            │
│  ・ビジネスの意思決定        ・定型的な作業        │
│  ・品質のレビュー            ・文書の下書き        │
│  ・倫理的な判断              ・データの整理・加工  │
│  ・顧客との信頼関係          ・繰り返し作業       │
│  ・クリエイティブな方向性    ・フォーマット変換     │
│                                                  │
└──────────────────────────────────────────────────┘

重要な原則: 「任せる」と「丸投げ」は違う

AIエージェントに仕事を任せるとは、「依頼→成果物を受け取る→レビューする→フィードバックする」というサイクルを回すことです。新入社員に仕事を教えるのと似ています。最初は細かく指示を出し、慣れてきたら徐々に任せる範囲を広げていくイメージです。

ポイント: AIエージェントは「万能な魔法の杖」ではなく、「優秀だが経験の浅いアシスタント」です。明確な指示を出し、成果物をレビューし、必要に応じて修正を依頼する ── この姿勢が成功の鍵です。


第2章: Claude Codeとは

2.1 Claude Codeの概要

Claude Codeは、Anthropic社(アンソロピック、Claude AIの開発元)が提供する AIエージェント型のCLIツール です。

CLI(シーエルアイ)とは: Command Line Interface(コマンドライン・インターフェース)の略で、文字を入力して操作するタイプのソフトウェアです。マウスでクリックする代わりに、キーボードで命令文を打ち込みます。最初は慣れないかもしれませんが、慣れると非常に効率的です。

┌──────────────────────────────────────────────────┐
│  ふだん使うソフト(GUI)    Claude Code(CLI)     │
│                                                  │
│  ┌──────────┐              ┌──────────────────┐  │
│  │ ボタン    │              │ $ claude         │  │
│  │ メニュー  │              │ > レポートを     │  │
│  │ アイコン  │              │   作成して       │  │
│  │ をクリック│              │                  │  │
│  └──────────┘              └──────────────────┘  │
│  マウスで操作               キーボードで操作      │
└──────────────────────────────────────────────────┘

Claude Codeの最大の特徴は、あなたのPCの中で直接ファイルを操作できることです。Claude.ai(ブラウザ版)がブラウザの中だけで動くのに対し、Claude Codeはあなたのデスクトップやフォルダの中のファイルを実際に読み書きできます。

2.2 Claude Codeでできること

Claude Codeは多彩な作業を実行できます。代表的なものを紹介します。

カテゴリできること具体例
ファイル操作ファイルの作成・編集・整理議事録テンプレートの作成、CSVの整形
情報収集Web検索による調査競合企業の情報収集、技術トレンドの調査
データ分析データの集計・可視化売上データの分析、グラフの作成
文書作成レポート・資料の作成報告書の下書き、提案書の作成
Git/GitHub連携バージョン管理・共同作業変更履歴の管理、チームでのファイル共有
自動化複数ステップの作業を一括実行「データ取得→加工→レポート作成」を一気に

Git/GitHub(ギット/ギットハブ)とは: ファイルの変更履歴を記録・管理するシステムです。「いつ、誰が、何を変更したか」が全て記録されます。Module 2以降で詳しく学びます。

2.3 料金体系

Claude Codeの利用には費用がかかります。主に2つの利用方法があります。

方法1: APIキーによる従量課金(じゅうりょうかきん)

使った分だけ料金が発生する方式です。APIキー(サービスを利用するための「鍵」のようなもの)を取得して利用します。

  • Anthropicのコンソール(管理画面)でAPIキーを発行
  • 利用量に応じて課金(入力テキスト量+出力テキスト量で計算)
  • 少量のお試し利用に向いている

方法2: Claude Pro / Max プラン(定額制)

月額固定料金で利用する方式です。

  • Claude Pro(月額 $20): Claude Codeの利用が可能(利用量に上限あり)
  • Claude Max(月額 $100〜): 大量利用向け、より多くの利用枠

どちらを選ぶべきか: まずはAPIキー方式で少額から試し、日常的に使うようになったらMaxプランへの移行を検討するのがおすすめです。

2.4 他のAIツールとの比較

「AIツールはたくさんあるけど、何が違うの?」という疑問にお答えします。

ツール種類特徴向いている用途
Claude.aiチャットボット(Web)ブラウザで手軽に使える。会話形式。質問への回答、文章作成、アイデア出し
ChatGPTチャットボット(Web)幅広い知識。プラグインで拡張可能。汎用的な質問、学習、翻訳
GitHub Copilotコード補完ツールプログラミング中にコードを自動提案。ソフトウェア開発(エンジニア向け)
Claude CodeAIエージェント(CLI)PCのファイルを直接操作。タスクを自律実行。ファイル操作、データ処理、自動化

Claude Codeが特に強い場面:

  • 「ファイルを実際に作って」と頼みたい時
  • 複数の作業を連続して自動実行したい時
  • PCの中にあるデータを直接扱いたい時
  • 繰り返しの作業を効率化したい時

Claude.aiやChatGPTの方が向いている場面:

  • ちょっとした質問への回答がほしい時
  • アイデアのブレインストーミングをしたい時
  • セットアップ不要で今すぐ使いたい時

第3章: セットアップ

3.1 前提条件の確認

Claude Codeを使うために必要なものを確認しましょう。

チェックリスト:
  [  ] PC(Windows / Mac / Linux のいずれか)
  [  ] インターネット接続
  [  ] Anthropicアカウント(無料で作成可能)
  [  ] 支払い方法の登録(APIキー利用の場合)
       またはClaude Pro/Maxプランの契約

3.2 ターミナルの開き方

Claude Codeを使うには、まず ターミナル(端末)を開く必要があります。

ターミナルとは: PCに文字で命令を伝えるための画面です。黒い画面に文字がカタカタ流れる、映画で見るようなアレです。

「ターミナルは怖くない」

初めてターミナルを見ると、黒い画面で尻込みするかもしれません。でも安心してください。ターミナルはただの「文字で操作する画面」です。間違ったコマンドを打っても、PCが壊れることはまずありません。「元に戻す」もできます。

そしてClaude Codeを使う場合、難しいコマンドを覚える必要はほとんどありません。Claude Code自体に日本語で話しかければ、複雑な操作はClaude Codeが代わりにやってくれます。

Macの場合

  1. Spotlight検索を開く: Command(⌘)+ Space キーを押す
  2. terminal」と入力する
  3. ターミナル.app」が表示されるので、Enterキーを押す
┌──────────────────────────────────────────────┐
│  ターミナル — zsh                              │
│                                              │
│  Last login: Mon Mar 11 10:00:00             │
│  username@MacBook ~ %                        │
│  ← ここに文字を入力できればOK                  │
│                                              │
└──────────────────────────────────────────────┘

Tip: よく使うので、Dockに追加しておくと便利です。ターミナルのアイコンを右クリック → 「オプション」→「Dockに追加」。

Windowsの場合

Windows Terminal(推奨)を使う方法:

  1. スタートメニューを開く
  2. terminal」と検索する
  3. Windows Terminal」または「PowerShell」をクリック
┌──────────────────────────────────────────────┐
│  Windows PowerShell                          │
│                                              │
│  PS C:\Users\username>                       │
│  ← ここに文字を入力できればOK                  │
│                                              │
└──────────────────────────────────────────────┘

Tip: Windows 11にはWindows Terminalが標準搭載されています。Windows 10の場合はMicrosoft Storeから無料でインストールできます。

3.3 Node.jsのインストール

Claude Codeを動かすには Node.js(ノードジェイエス)というソフトウェアが必要です。

Node.jsとは: もともとはプログラミング言語JavaScriptの実行環境ですが、Claude Codeを動かすための「土台」として必要になります。直接操作することはないので、インストールするだけでOKです。

Node.jsがすでに入っているか確認する

ターミナルで以下のコマンドを入力して Enter キーを押してください。

node -v

結果の見方:

  • v18.0.0v20.11.0 のように バージョン番号が表示された場合 → すでにインストール済みです。v18以上であればそのまま次に進んでください。
  • command not found'node' は、内部コマンドまたは〜 と表示された場合 → インストールが必要です。

インストール手順

Macの場合:

# 以下のコマンドをターミナルに貼り付けて Enter を押してください

# 方法1: 公式サイトからダウンロード(推奨)
# https://nodejs.org/ にアクセスし、LTS版をダウンロードしてインストーラを実行

# 方法2: Homebrew(パッケージマネージャ)を使う場合
brew install node

Windowsの場合:

  1. ブラウザで https://nodejs.org/ にアクセス
  2. 「LTS」と書かれたボタン(推奨版)をクリックしてダウンロード
  3. ダウンロードしたインストーラ(.msiファイル)を実行
  4. 画面の指示に従って「Next」を押していく(設定は変更不要)
  5. インストール完了後、ターミナルを 一度閉じて開き直す

インストール後、再度 node -v を実行してバージョン番号が表示されることを確認してください。

3.4 Claude Codeのインストール

いよいよClaude Code本体をインストールします。

インストールコマンド

ターミナルで以下のコマンドを入力して Enter キーを押してください。

npm install -g @anthropic-ai/claude-code

コマンドの意味:

パーツ意味
npmNode.jsのパッケージ(ソフトウェア)管理ツール
installインストールする
-gPC全体で使えるようにインストール(globalの略)
@anthropic-ai/claude-codeClaude Codeのパッケージ名

インストールには1〜2分かかります。画面に文字がたくさん流れますが、最後にエラー(ERR! という赤い文字)が出なければ成功です。

エラーが出た場合:

  • EACCES エラー(Macの場合): コマンドの先頭に sudo を付けて再実行してください → sudo npm install -g @anthropic-ai/claude-code(パスワードを求められたらPCのログインパスワードを入力)
  • その他のエラー: Node.jsのバージョンが古い可能性があります。Node.js v18以上であることを確認してください。

認証の設定

インストール後、Claude Codeを初めて起動すると認証(ログイン)が求められます。

claude

上のコマンドでClaude Codeを起動すると、以下のような流れになります。

  1. ブラウザが自動で開き、Anthropicのログイン画面が表示される
  2. Anthropicアカウントでログインする(アカウントがなければ新規作成)
  3. Claude Codeにアクセスを許可する
  4. ターミナルに戻ると、認証完了のメッセージが表示される

Tip: APIキーを使う場合は、環境変数 ANTHROPIC_API_KEY に設定する方法もあります。詳しくはリファレンスを参照してください。

3.5 初回起動と動作確認

認証が完了したら、Claude Codeが正しく動作するか確認しましょう。

claude

起動すると、以下のような画面が表示されます。

┌──────────────────────────────────────────────────┐
│                                                  │
│  Claude Code                                     │
│                                                  │
│  > こんにちは!何かお手伝いできることは            │
│    ありますか?                                   │
│                                                  │
│  ← ここにメッセージを入力                         │
│                                                  │
└──────────────────────────────────────────────────┘

試しに以下のように入力してみてください。

今日の日付を教えてください

Claude Codeが日付を答えてくれれば、セットアップは完了です。おめでとうございます!


第4章: 基本操作

4.1 Claude Codeの起動と終了

起動方法:

ターミナルで以下を入力します。

claude

これだけでClaude Codeが起動します。

終了方法:

Claude Codeを終了するには、以下のいずれかを行います。

方法操作
コマンドで終了/exit と入力して Enter
キーボードショートカットCtrl + C を2回押す
別のショートカットCtrl + D を押す

4.2 基本的な対話の仕方

Claude Codeとの対話は、日本語の自然な文章で行えます。特別な書き方やプログラミング言語は不要です。

良い指示の例:

> 「自己紹介」という名前のテキストファイルを作ってください。
  中身は、名前・所属・趣味の3項目にしてください。

> このフォルダにあるCSVファイルの中身を見せてください。

> sales_data.csvの売上合計を計算してください。

より良い指示にするコツ:

┌──────────────────────────────────────────────┐
│         指示を出すときの5つのポイント           │
├──────────────────────────────────────────────┤
│                                              │
│  1. 何をしてほしいかを明確に書く              │
│     × 「いい感じに」                         │
│     ○ 「表形式で、日付順に並べて」           │
│                                              │
│  2. 完成イメージを具体的に伝える              │
│     × 「資料を作って」                       │
│     ○ 「A4一枚の要約資料をMarkdown形式で」   │
│                                              │
│  3. 制約条件があれば伝える                    │
│     「500文字以内で」「日本語で」「箇条書きで」│
│                                              │
│  4. 一度に複数の作業を依頼してOK              │
│     「このCSVを読んで、集計して、             │
│      グラフを作って、レポートにまとめて」      │
│                                              │
│  5. うまくいかなければ追加で指示する           │
│     「もう少し簡潔にして」                    │
│     「表の列を入れ替えて」                    │
│                                              │
└──────────────────────────────────────────────┘

4.3 ファイル操作の基本

Claude Codeの大きな強みは、あなたのPC上のファイルを直接操作できることです。

作業フォルダ(カレントディレクトリ)の概念

Claude Codeは、起動した場所(フォルダ)を起点に作業します。この「今いる場所」を カレントディレクトリ(current directory: 現在のフォルダ)と呼びます。

例: デスクトップで Claude Code を起動した場合

  デスクトップ/          ← カレントディレクトリ(今いる場所)
    ├── 資料.txt
    ├── データ.csv
    └── プロジェクト/
         ├── 報告書.md
         └── 画像.png

  → Claude Code は「デスクトップ」フォルダの中を作業場所とします
  → 「ファイルを作って」と言うと、デスクトップに作られます

作業フォルダを指定して起動する方法:

# 特定のフォルダに移動してから起動する
cd ~/Documents/my-project
claude

# または、直接フォルダを指定する(cdはchange directoryの略で、
# フォルダを移動するコマンドです)
cd /path/to/folder && claude

Tip: cd は「change directory」(ディレクトリを変更)の略です。~ はホームフォルダ(Macなら /Users/あなたの名前、Windowsなら C:\Users\あなたの名前)を意味します。

ファイルの作成を依頼する

Claude Codeにファイルを作成してもらいましょう。

> 「hello.txt」というファイルを作成してください。
  中身は「はじめてのClaude Code」としてください。

Claude Codeは以下のように動作します。

  1. ファイルの内容を作成する
  2. 「このファイルを作成してもよいですか?」と確認してくる(後述の権限確認)
  3. 許可すると、ファイルが作成される

作成されたファイルを確認する

ファイルが本当に作成されたか確認する方法はいくつかあります。

方法1: Claude Codeに聞く

> 今作ったファイルの中身を見せてください

方法2: ファイルマネージャ(Finder/エクスプローラ)で確認

カレントディレクトリのフォルダをファイルマネージャで開くと、作成されたファイルが見えます。

方法3: ターミナルで確認(Claude Code終了後)

# ファイル一覧を表示
ls

# ファイルの中身を表示
cat hello.txt

4.4 権限確認の仕組み

Claude Codeが何かを実行しようとする時、必ず事前に許可を求めてきます。これは安全のための重要な仕組みです。

┌──────────────────────────────────────────────┐
│  Claude Code が許可を求める例:                 │
│                                              │
│  「hello.txt を作成します。よろしいですか?」  │
│                                              │
│  [Y] はい  [n] いいえ  [a] 常に許可          │
│                                              │
└──────────────────────────────────────────────┘
選択肢意味いつ使う?
Y(はい)今回だけ許可する内容を確認してOKな時
n(いいえ)許可しない意図しない操作の時
a(常に許可)今後同じ種類の操作は自動許可信頼できる操作を繰り返す時

安心ポイント: Claude Codeは勝手にファイルを消したり、インターネットにデータを送ったりしません。重要な操作の前には必ず確認が入ります。不安な時は「n」で拒否すれば、その操作はキャンセルされます。

4.5 スラッシュコマンド

Claude Codeには、/(スラッシュ)で始まる特別なコマンドがあります。これは対話中にClaude Code自体の操作をするためのものです。

コマンド機能説明
/helpヘルプ表示使い方のガイドを表示
/clear会話クリアこれまでの会話履歴を消去して最初から
/exit終了Claude Codeを終了する
/status状態表示現在の設定や接続状態を確認
/modelモデル切替使用するAIモデルを変更
/costコスト表示現在のセッションで使用した料金を確認
/compact会話を要約長くなった会話を要約してコンテキストを節約

Tip: /cost コマンドは特に便利です。使いすぎが心配な時は、こまめにチェックしましょう。


第5章: CLAUDE.md — AIへの引き継ぎ書

5.1 CLAUDE.mdとは何か

CLAUDE.md(クロード・エムディー)は、Claude Codeが作業を始める時に自動で読み込む 設定ファイル です。

Markdown(マークダウン)とは: テキストを見出しや箇条書きなどで構造化するための簡単な書き方ルールです。# で見出し、- で箇条書き、といった記号を使います。このテキスト教材自体もMarkdownで書かれています。

CLAUDE.mdを一言で表すなら、「AIへの引き継ぎ書」 です。

┌──────────────────────────────────────────────┐
│                                              │
│   新しいメンバーが入社した時に渡す            │
│   「引き継ぎ書」を思い出してください。        │
│                                              │
│   ・部署のルール                              │
│   ・よく使うツール                            │
│   ・仕事の進め方                              │
│   ・注意事項                                  │
│                                              │
│   CLAUDE.md はこれと同じです。                │
│   Claude Code に「あなたはこういう仕事を      │
│   こういうルールで進めてください」と           │
│   伝えるための文書です。                      │
│                                              │
└──────────────────────────────────────────────┘

5.2 なぜ必要か

CLAUDE.mdがないと、Claude Codeを起動するたびに同じ説明を繰り返すことになります。

CLAUDE.md なしの場合:

  毎回こんなやりとりが必要...
  > 「私はマーケティング部です」
  > 「レポートはこの形式で書いてください」
  > 「ファイル名は日付_内容.md にしてください」
  > 「日本語で書いてください」

CLAUDE.md ありの場合:

  起動した瞬間から、Claude Code はあなたの状況を把握済み!
  > 「先月のキャンペーンレポートを作って」
  → すぐに適切な形式・命名規則で作業開始

5.3 基本的な書き方

CLAUDE.mdは、作業フォルダのルート(一番上の階層)に置きます。

my-project/
  ├── CLAUDE.md          ← ここに置く
  ├── data/
  │    └── sales.csv
  └── reports/
       └── monthly.md

基本テンプレート:

# プロジェクトについて

このプロジェクトは〇〇のためのものです。

## ルール

- 日本語で作業してください
- ファイル名は「YYYY-MM-DD_内容.md」の形式にしてください
- レポートはMarkdown形式で作成してください

## フォルダ構成

- `data/` : 元データを置くフォルダ
- `reports/` : レポートの出力先
- `templates/` : テンプレートファイル

## よく行う作業

1. data/ フォルダのCSVを読み込む
2. 集計・分析する
3. reports/ フォルダにレポートを出力する

5.4 実例: 業務向けCLAUDE.mdサンプル

サンプル1: マーケティング部門向け

# マーケティング部 作業ガイド

## 基本ルール
- すべての出力は日本語で行うこと
- 数値はカンマ区切り(例: 1,000,000)で表記
- 日付はYYYY年MM月DD日の形式で表記
- 金額には必ず「円」を付ける

## ファイル命名規則
- レポート: `YYYY-MM_レポート名.md`
- データ: `YYYY-MM-DD_データ名.csv`
- 画像: `fig_連番_説明.png`

## レポートのテンプレート構成
1. サマリー(3行以内)
2. 主要KPIの表
3. 前月比・前年比の分析
4. 改善提案
5. 次月のアクションアイテム

## 使用するデータソース
- `data/ga/` : Google Analyticsのエクスポートデータ
- `data/ads/` : 広告プラットフォームのデータ
- `data/crm/` : CRMからのエクスポートデータ

サンプル2: 営業部門向け

# 営業部 作業ガイド

## 基本ルール
- 顧客名は仮名またはIDで記載(個人情報保護)
- 金額は千円単位で表記(例: 1,500千円)
- 機密情報はファイルに含めないこと

## よく依頼する作業
1. 週次の営業報告書作成
   - 入力: `data/weekly/` の活動データ
   - 出力: `reports/weekly/` に報告書を作成

2. 顧客リストの整理
   - 重複の削除
   - ステータスの更新

3. 提案書の下書き
   - `templates/proposal_template.md` をベースに作成

## 注意事項
- 競合他社の機密情報は絶対に含めない
- 見積金額は必ず人間が最終確認する
- 顧客への送付前に必ず上長レビューを通す

サンプル3: 総務・管理部門向け

# 総務部 作業ガイド

## 基本ルール
- 社内文書のフォーマットに従うこと
- 日付は和暦と西暦を併記(例: 令和8年(2026年)3月11日)
- 敬語・丁寧語を基本とする

## フォルダ構成
- `notices/` : 社内通知文書
- `minutes/` : 議事録
- `manuals/` : 業務マニュアル
- `templates/` : 各種テンプレート

## 議事録の作成ルール
1. 日時・場所・参加者を冒頭に記載
2. 議題ごとに「議論内容」「決定事項」「TODO」を分けて記載
3. TODOには必ず担当者と期限を入れる
4. ファイル名: `YYYY-MM-DD_会議名_議事録.md`

## 社内通知の作成ルール
1. 件名は簡潔に(20文字以内)
2. 宛先を明記(全社員 / 部門名 / 個人名)
3. 要旨を冒頭3行でまとめる
4. 詳細は箇条書きで記載

5.5 CLAUDE.mdを作ってみよう

CLAUDE.mdは、Claude Code自身に作ってもらうこともできます。

> このフォルダにCLAUDE.mdを作ってください。
  私はマーケティング部門の担当者で、
  月次レポートの作成や競合分析をよく行います。
  ファイルは日本語で、日付は YYYY-MM-DD 形式で管理しています。

Claude Codeが適切なCLAUDE.mdを生成してくれます。生成された内容を確認して、必要に応じて修正を依頼しましょう。

ポイント: CLAUDE.mdは一度作ったら終わりではありません。使いながら「こういうルールも追加したい」と思ったら、どんどん更新していきましょう。Claude Codeに「CLAUDE.mdにこのルールを追加して」と頼むだけでOKです。


まとめ

このModuleで学んだことを振り返りましょう。

学んだこと
第1章AIエージェントはチャットボットとは違い、タスクを自律的に実行する「チームメンバー」
第2章Claude CodeはPCのファイルを直接操作できるAIエージェント型CLI
第3章ターミナルを開き、Node.jsとClaude Codeをインストールする手順
第4章Claude Codeの起動・終了、対話の仕方、ファイル操作の基本
第5章CLAUDE.mdで「AIへの引き継ぎ書」を作り、効率的に作業する

次のModuleでは: Git/GitHubの基本を学び、ファイルの変更履歴を管理する方法を習得します。Claude Codeと組み合わせることで、チームでの共同作業がぐっと楽になります。